若手みらい会議

若手提案による
「VR研修」の導入

東京サンケイ運営管理チーム
五十嵐Igarashi
(2022年入社/設備工業科卒)

Introduction

若手の意見に耳を傾け、尊重する――そのような文化をサンケイビルマネジメントは培ってきました。そしてその文化が具現化されたのが、今回の「若手みらい会議」です。これは、若手の提案による、若手中心のメンバーで実行されたプロジェクト。中心メンバーとなったのは新入社員の同期2名。それはどのようなものだったのか。何を生み出したのか。メンバーの一人である、入社2年目の五十嵐史也に、現在の仕事内容も含めて語ってもらいました。

80,000㎡のビルを運営管理する、
今の仕事のやりがい

最初に現在担当されている仕事内容について教えてください。

大手町の東京サンケイビルの運営管理を担当しています。具体的には、受配電設備、空調や給排気設備、熱源設備、給排水設備や、東京サンケイビルには、飲食店もテナントとして入居しているので厨房除害設備、さらに非常用発電機や排煙機、消火設備等の非常用設備、これらの巡視・点検及び不具合箇所の是正処置の提案などを行っています。こうした日常的な巡視・点検に加えて、大型冷凍機・チラー(冷却水循環装置)等の運用を行い、各テナントの居室内の温度を監視、また中央監視盤でビル内設備を監視し緊急時に対応しています。これら設備面の適切な運用管理によって、テナントの方々が安心して快適に過ごしていただくことをミッションとしています。したがって、テナントやビル利用者からの問い合わせや様々な要望に対応することも、私たちの業務の一環になります。

それら職務のやりがいを教えてください。

担当する東京サンケイビルは、延べ面積約80,000㎡の広大なビルです。そのため、一般的なオフィスビルよりも各設備容量が大きく、ひとつひとつの業務に確かな手応えがあり、必然とモチベーションが上がります。各設備は、どれも欠けてはならない、人間でいうところの心臓やその他の臓器にあたる機器であり、文字通り、ビルの命を支えている実感がある仕事です。しかし、ビルの生命線の設備点検には、危険も伴います。たとえば充電電路の測定作業や高所作業。そのような私たちの業務を通じて、ビルの安全と利便性・快適性が担保されていることに大きなやりがいを感じます。

新入社員研修の総仕上げ、
「プレゼン」から「若手みらい会議」が始まった

今回、どのような経緯を辿って「若手みらい会議」が生まれたのですか。

入社後、私たちは3ヶ月間の研修へ参加しました。最初はビジネスマナーや社内規定などの基本的なことを学び、2ヶ月目からは現場で先輩方から設備点検業務や運用の指導を受けました。いわゆるOJTです。入社した年の7月に独り立ちし、現在の業務に就きました。3ヶ月の研修の最後は社長も含めた役員に向けて、意見発表・プレゼンの機会が設けられています。ここではビル設備の概要や業務内容を発表し、学んだ知識の確認を行うとともに、研修を通じて感じたことやこれからの目標など、自身の率直な想いや気持ちを述べます。これら意見発表に加えて、業務に関する自らのアイデアを提案するプレゼンがあります。これが「若手みらい会議」に繋がっていきました。私たちの年のテーマは「SDGs」と「カーボンニュートラル」。これらに関わる新しいアイデアをプレゼンすることが求められたのです。

五十嵐さんは、どのようなアイデアをプレゼンしたのですか。

SDGsはあまりに広く、漠然としていると感じたため、カーボンニュートラル実現のためのアイデアを考え、CO2排出の低減をテーマとしました。オフィスという限られた空間で何ができるかを熟考した結果、着目したのが窓ガラス。夏に窓ガラスから透過してくる日光は、オフィス内の温度を上昇させ、それに伴い冷房機器に負荷がかかり、より電力消費が高くなる。そこで考えたのが、日光の熱透過率を下げること。断熱フィルムのようなものを窓に貼ることで、熱透過率を下げ電力消費を低減=CO2排出量低減するというアイデアです。

五十嵐さんのアイデアが「若手みらい会議」に繋がったのですか。

私と同期の社員が行ったプレゼンで提案された案が、実際に具現化しました。中々、いいアイデアが思いつかない。そこで先輩のサポートを受ける中で、見出したのが「VR(バーチャル・リアリティ)」です。SDGsで掲げられた目標に中に「質の高い教育をみんなに」というものがあります。この目標は、世界の人たちが公平に、良い教育を受けられるように定められたゴールですが、その「良い教育」にフォーカスし、「新入社員研修に『VR』を導入する」という提案を行いました。この提案は、社長をはじめ経営幹部の胸に刺さり、プレゼン直後に、私を含む「若手二人で実用化を考えてくれ」という指示が出たのです。元々、当社は安全意識が高い会社であり、安全にお金をかけることは惜しまない風土があります。そして「VR」導入プロジェクトはスタートしました。

新入社員研修におけるリスクを回避し、
安全な研修を実施する

新入社員研修に「VR」を導入するとは、どういうことなのか教えてください。

VR研修を一言で説明すると、仮想空間で行う研修をとなります。先述しましたが、設備の点検には危険が伴います。特に測定作業は、ミスをすると感電する危険性があります。もちろん、作業に習熟するためには、実際に現場で身体を動かして体験することで一番理解が深まり、効果的ですが、万が一事故が起こると大問題になりかねません。そうしたリスクを低減するツールとして「VR研修」が提案されました。リスク低減だけでなく、技術・ノウハウの見える化や教育コストの低減、技術者育成のスピードップなど、「VR研修」は多くのメリットをもたらします。社長から実用化へのGOサインが出たことで、私たちは具体的な取り組みを開始しました。実は「VR研修」は、建設や設備に関わる業務に向けて、各社から様々なコンテンツが提供されています。導入するにあたって、どのようなコンテンツがいいか、コストを考えてどのような購入方式が良いかなど、二人で検討を進めました。

その結果、どのような「VR」を研修に導入したのですか。

コンテンツは多種多様です。私たちは、「VR」導入の最大の目的であるリスク低減にこだわり、2種類のコンテンツを選択しました。一つが「活線作業」。活線とは通電している状態のケーブルを指し、危険が伴います。もう一つが「脚立作業」。脚立を用いる高所作業も滑落の危険があります。これら作業をバーチャルで体験するコンテンツを選びました。「VR」はゴーグル着用が一般的ですが、私たちが選んだコンテンツのポイントは仮想空間に加えて、アタッチメントが付いていること。活線作業では低圧の電気が流れる機器、脚立作業では低い台が付き、起きてはならない実際の事故を疑似体験できます。基本は私たち新入社員二人で進めましたが、予算の検討や導入後の「VR研修」の運用等もあり、経理や企画チームの先輩方のサポートを受けました。一番のハイライトは、当社の役員のみならず、親会社のサンケイビルの役員も参加した会議での中間報告・プレゼンです。非常に緊張した時間でしたが、私たちの提案への反対意見や疑義はなく、導入決定までスムーズに進めることができました。

新しい技術で安全で快適を実現し、
ビル運営管理を進化させていく

「VR研修」を導入後、社内外の評価を教えてください。

2023年4月に入社した社員から、「VR研修」の利用が始まっています。ただ私たちは研修を担当するわけではありませんし、日々日常業務に追われていますから、研修担当の方や実際に研修を受けた新入社員の声は届いていません。多分、彼らが配属された後に話を聞くことができると思います。「VR研修」は安全な研修を実現するだけでなく、事前に設備に関する知見が浅い人でも、「VR研修」を通じて、同じスタートラインに立てると思っています。今回、新入社員でありながら、新しい取り組みに挑戦する機会をいただきました。これまで、プレゼンを行ったこともありませんでした。「VR研修」導入の検討や役員を前にしてのプレゼン、先輩方とのミーティング等々、日常業務では触れることができない貴重な経験を積むことができたと感じています。

「若手みらい会議」を経て生まれた今後の目標を教えてください。

今回、安全な研修の実現に向けて「VR研修」を導入できましたが、実際の設備点検作業では、事故を回避するため、あるいは事故発生後の対応のため、より安全に活動するための技術が求められていると感じています。たとえば地震などの衝撃で電路は断線や混触、短絡などにより、高電圧の侵入や大電流が流れる可能性もあります。あるいは、漏電発生が事故に繫がるケースもあります。事前の事故予知や問題箇所の検知に、新しい技術を導入する余地は十分あると思います。それが現場で採用され、さらに「VR研修」にも展開すれば、より安全で快適なビルの運営管理が実現すると感じています。私個人は、設備管理の面白さを日々実感しており、勉強するモチベーションが学生時代以上に高まっています。当面の目標は電気主任技術者の資格取得ですが、何事にも興味を持って前向きに取り組み、着実に成長していきたいと考えています。

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